

経済産業省は2025年8月26日に、「令和6年度電子商取引に関する市場調査」の結果を公表しました。
セカイカートでは、全4回のシリーズで調査資料を基に解説と独自の考察をお届けします。
このコラムは、第1回になります。
第1回 BtoC-ECとBtoB-ECそれぞれの市場成長の背景と今後の見通し
第1回目では、BtoC-ECとBtoB-ECそれぞれの市場成長の背景と今後の見通しについて解説します。
BtoC EC市場の伸び率の鈍化
この調査結果によると、2024年度の国内BtoCーEC(消費者向け電子商取引)の市場規模は前年比5.1%増の26兆1225億円でした。
BtoC-ECの物販系分野は同3.7%増の15兆2194億円で、2年連続で5%を切る形となりました。EC化率は同0.4ポイント増の9.78%となりました。
物販系分野のBtoCーEC市場規模の成長率は昨年の伸び率の4.83%を下回りました。
国内BtoC-EC市場の物販系分野では、2019年の10兆5,138億円(EC化率6.75%)から、2020年には12兆2,333億円(EC化率8.08%)へと大幅な増加が見られました。
この背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機とした「巣ごもり需要」によって、消費者の間でECの利用が急激に拡大した一方で、必要に迫られたEC導入が一巡したことにり、BtoC-EC市場の成長基調にあるものの多少鈍化していると言えるでしょう。
BtoB EC市場は今後さらに成長
2024年の国内BtoB-EC市場規模は、前年比10.6%増の514兆4,069億円に達し、「その他」を除いたEC化率は43.1%に増加しました。
特に、食品製造業のBtoB-EC市場規模は41兆5,859億円(前年比17.0%増)でEC化率81.3%、産業関連機器・精密機器製造業は23兆8,228億円(前年比7.5%増)でEC化率47.8%、鉄・非鉄金属製造業は33兆5,717億円(前年比8.6%増)でEC化率50.6%と、主要業種で市場が拡大しています。
これらのEC化には、EDIやECモール、マーケットプレイス、自社ECなどが含まれています。
EDIは発注企業と受注企業双方にシステムが必要なため、自動車や電機といった特定の業種ではすでに導入が進んでいましたが、現在、BtoB-EC市場の成長を牽引しているのは、ECモール、マーケットプレイス、自社ECといった、PCやスマートフォンからインターネット回線を通じてWebサイト上で受発注を行うシステムです。
BtoB-EC導入の背景と今後の見通し
BtoB-EC導入の背景には、業務効率化のためのデジタル化促進(業務過多、人手不足の対策)、顧客からの24時間365日発注要望(働き方改革による事務所外からの発注など)、取引先・販路拡大(受注業務の手間削減、販路拡大に集中)、競合他社対策(競合他社がEC受注を開始していることへの対策)、そしてデータ活用による全社DX推進(データ化が必須)といった要因が挙げられます。
これらの要因を背景に、BtoB ECの導入は継続的に増加傾向にあり、自社の業務効率化だけでなく、競合他社優位性や顧客提供価値向上の観点からもBtoBのEC導入は、引き続き拡大傾向にあるでしょう。
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出展:本コラムで掲示している資料は、「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」から引用しています。
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